トマトフスキーの美術手帖

美術史を専攻している大学4年生のブログです。和鏡について卒論かきます。

「鳥獣戯画」甲巻の第1紙から第4紙について

「鳥獣戯画-京都 高山寺の至宝-」東京国立博物館にて開催されるそうですね。

2014年は2度、「鳥獣戯画」甲巻にお世話になりました。
1度目は、誰もが一度は目にしたことがあるあの有名な兎と蛙が相撲をとる場面。
確か、構図から読み説くストーリー展開について論じた気がします。

そして2度目は、第1紙から第4紙前半の水浴場面を取り上げて風俗表現の意味と機能について論じました。「鳥獣戯画」は、あまりにも兎と蛙の相撲が有名過ぎて、なかなか「鳥獣戯画」の巻全体がどのような構成になっているのか知らない人も多いのではないでしょうか。こちらの画像が、その水浴場面です。

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絵巻物は通常、右から左へと読み進めていきます。だから、この岩の描写が「鳥獣戯画」の導入部。岩の上から、一匹の兎が鼻を抑えて水に潜ろうとしていますね。鼻に水が入らないように手を使うなんて、なんとも人間らしいです。また、二匹の猿と一緒に居る兎は柄杓を持っています。何か目的をもって道具を持つなんていう行為も、まさに人間がすることです。…そんなことを指摘しながら、論を進めた気がしますがここでの再現性は0ですね(笑)。

それと、注目して頂きたいのが、導入部に水の描写があること。水は俗世と異世界の境界線としての役割があります。浦島太郎も海という水が竜宮城との入り口になっていますね。これは仮説ですが、「鳥獣戯画」の導入部に川を描くことは、俗世と動物たちが動き回る世界(異世界)の境界線の役割を意味しているのではないか、ということを考えました。前提条件として、「鳥獣戯画」は全巻を通して俗世から離れ、神仏が住む世界(動物たちが人間のように動く不思議な異世界)への憧れを描いた説を支持しなければいけませんが。

…こんなことを考えなくとも、「鳥獣戯画」に出てくる動物たちの動きはとてもキュートに描かれており、見ているだけでとても癒されます。日本のカワイイの原型とも言える可愛らしさですよね。

展覧会は来年4月28日から6月7日まで。
きっと授業で行きそうな気もしますが、個人的にも足を運びたくなる内容の展覧会です。